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東京高等裁判所 昭和34年(く)143号 決定 1960年1月27日

少年 R(昭一七・九・二一生)

主文

本件抗告を棄却する。

理由

本件抗告の趣意は、保護者父K名義の抗告申立書記載のとおりであるから、ここにこれを引用する。

よつて少年保護事件及び少年調査各記録によると、少年の家庭は実父母を始め全員七名で、父Kは国鉄大井工場に勤務し生活上の不安はないこと、少年は昭和三十三年三月中学校卒業後暫らく川崎市○○百貨店に勤務し、同年六月頃に東京都品川区西品川○○製作所に転じプレス工として稼動したが、昭和三十四年九月頃よりは無断欠勤していたこと、少年は昭和三十三年中に犯罪容疑等にて警察の取調べを受けること三回に及び、昭和三十四年三月十三日東京家庭裁判所において恐喝未遂保護事件により保護観察決定を受け担当保護司の補導下におかれ、一時は比較的真面目にプレス工として働いていたが、同年七月頃よりは仕事にあきると共に怠業の上映画見物、盛場徘徊などに明け暮れることが多くなり、これに伴い悪友との交友も復活し、同年九月頃より前示の如く○○製作所を無断欠勤し、殆ど毎日家出外泊をつづけ本件各非行も右家出外泊中に行われているものが多く、しかも各非行とも悪友の一人或は数人との共謀に出たものであることが認められる。

本件抗告の趣意は、少年を少年院に送致した場合、更生につき確実な保証があれば格別であるが少年院にていよいよ悪友がふえ、退院後再び社会に迷惑をかけるようになることが世上往々見る事例であるため、今回は少年をその母の弟である秋田県南秋田郡○○○○○なる○川○蔵方に預け、農事や製炭を手伝わせ○川の監督の下に更生するよう計らいたいというのであるが、少年には知力障碍こそ認められないけれども、情意面における発散的、外向的変調が著しく他からの被影響性も大きい点などから、従前の生活態度を併せ考えると適切な処置のない限り再非行の可能性は極めて大きいと言わねばならぬところであり、且また家庭における実父母の少年に対する指導監督にも多く期待し得ず、しかも本件各非行が保護観察中に行われたこと等を彼此総合すると、少年に対し抗告人主張の如く処置することはその性格矯正と環境調整の見地から当を得たものとなし難く、むしろ少年を一定期間少年院に収容し旧来の交友を絶ち再思反省の機会を与え、その間矯正教育によつて勤労意欲と耐久力を養うと共に健全なる社会適応性を体得せしめることこそ最も適切妥当な措置と認めるので、これと同旨に出でた原決定は相当であつて抗告人主張のような著しい不当な処分とは考えられない。よつて本件抗告はその理由がないので少年法第三十三条第一項に則りこれを棄却すべきものとし主文の如く決定する。

(裁判長判事 三宅富士郎 判事 東亮明 判事 井波七郎)

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